Winny.infoとしての立場

この数週間のWinnyに関する動きに対しての、この別館も含めたWinny.infoとしての立場を表明しておきます。
Winny個人情報流出まとめの長い長いリストを見るまでもなく、Winnyを含むファイル共有アプリケーションを基盤とした情報漏洩型ウイルスの「普及」が加速しています。この流れは、既にある一線を越え、社会基盤そのものに大きな被害を与えつつあります。

このような状況において、官房長官の名前でWinny利用の自粛を訴えかけたり、バックボーンに於けるWinny通信規制などのWinnyという特定のアプリケーションの利用に絞って圧力を掛ける動きは、情報漏洩型ウイスルの動きを大きく制限するのに効果的であることは明かで、短期的な対策としては、それほど非難されるべきものでは無いと考えています。ただし、これがWinnyの宣伝になってしまったという側面もあり、その点は大いに責められるべきでしょう。

一方、山田オルタナティブなどからも予測されるとおり、流通経路にWinny以外を用いたり、活動が潜伏化するなどより悪質なものが登場するのは時間の問題です。そのため、長期的には特定のファイル共有アプリケーションを名指しするような動きではなく、内部統制の観点から本質的に情報流出の可能性を減らしていく事が必要となります。

今、一番恐れているのは、本来「とりあえずの一時的対処」であるべきWinnyファイル共有アプリケーションへの圧力が、より広範囲な「集中管理性の低いアプリケーション全般に対する圧力」に転換していく事と、ファイル共有アプリケーションを使っていない人に他人事感を与えてしまうことです。

必要なことは、正しい情報に基づいた議論と政策です。

Winnyは、種類を問わず2GB以内のファイルを非常に効率よく「ばらまく」ことに特化したアプリケーションです。Winny.infoでは、その危険性も含め、技術的な視点から情報を出していくという目的に変わりはありません。

まとめ

  • Winny規制は本質的ではないが、効果的であり短期的には非常に有効
    • より広範囲な管理義務などの規制策に発展することは好ましくない
  • 今後より悪質なものが登場する前に、本質的な情報統制を進めるべき
    • Winnyとかを使っていない人も他人事じゃないよ
  • Winny.infoは今後も技術的な視点で続けていきます

追記 (2006-03-24)

Winnyに対する「誤った」擁護を見る度に切なくなるので、短くまとめた後に申し訳ないのですが、追記させてください。

Winnyの危険性に対してP2P技術の将来性を持ち出すことは、Winny擁護にはならないので、個人的に勘弁してほしいと常々思っています。その二つを結びつけて擁護することで、WinnyP2P技術の代表格であるかの扱われてしまい、P2P技術が管理不能なものであるという偏った誤解を強めることに繋がります。重要なことは、P2P的であるかどうかではなく、「管理性」の有無です。

Winnyの匿名性は管理不能性と密接に結びついたものであり、一次配布者すらその流通を止めることができないというWinnyの設計そのものが、情報漏洩型ウイルスの「性質の悪さ」となっていることを理解して欲しいです。そして、その世界の上に、BBSとしてこれまでとは違う形での管理性を持たせようとしたのがWinny2の目的でした。

Winnyの登場は、法や人間が追いつくことのできる限度を超えて、時間を進めてしまいました。Winny自体の設計もまた、時間の進みに対応することができなかった、これこそがWinnyの本質的な問題点でしょう。